昨夜、倉木のマンションから帰った正義は家には帰らず一晩車の中で過ごした


それは自宅に帰っても落ち着かないし、何かあった時にはすぐ行動出来るようにしておく為だ

それに…


“明日、北徳春高校にて”

そんな書き込みを見てしまったのだから、この場所で待っているしかない



『仕事なんて手つかねーよ。特に今日はな』


倉木は温かいコーヒーを一口飲んだ



『……ありがとうございます』


正義は頭を下げて、おにぎりを受け取った



倉木が仕事を休んでまで駆け付けた理由は2つ



一つは正義が無茶をするのではないか心配だったから


もう一つはやっぱり修の事

正義同様、倉木もまたこの悲しい連鎖を終わらせようとしていた

あの時、差しのべてあげられなかったこの手で



『……倉木さん?』


ふっと正義が見ると、倉木の持つコーヒーがブルブルと震えていた



『…はっ情けねーよな。あいつに会う資格なんて俺にはないのに』


そんな倉木らしくない言葉に正義は静かに言った



『俺が言うのも変ですけど、悔いている事があるならちゃんと言うべきです。そうじゃないと一生相手には伝わらないですよ』


その瞬間倉木の震えが止まった、そして


『…そうだな。ありがとう』と目を瞑りながら言った