普通ならば一人より大勢で居た方が楽しいし、遊びに誘ってくれる事は嬉しい事だ


でもそうじゃない人も世の中には居る

それが悪意やわざとやっている事だとしたら、本当の気持ちを言えるだろう


しかし横川直輝に悪意という気持ちは全くない


岡吉が一人で居るのも、帰りにまっすぐ帰るのも可哀想だと思いやっている事


“俺達友達なんだから”

その言葉が岡吉を深く縛りつけていた

その結果、塾があるとも言えず苦手なカラオケも断れない



こんな一人になってしまういじめの他に

善意という苦痛が世の中には存在する


自分が良かれと思っている事は必ずしも正しい訳ではない


それが些細な事でも

他人には理解出来ない事でも

誰かには眠れない程悩む問題で、それは本人しか分からない


『……ッ………』

岡吉は声を押し殺し、涙をこらえていた


明日が来るのが怖い



そう震えている人間は今どのくらい居るのだろうか

そしてそれに気付いてあげれる人間はどのくらい存在する?


その数はきっと比例しない


だからこそ、殺人鬼は刃を落とす

例えその手に迷いが生まれたとしても