暫く部屋に沈黙が続き、倉木はテレビの横にある写真を手に取った
『……俺の娘は小さい頃から気管支炎を患(わずら)っててさ、妻は最初からこんな都会に住む事を反対してたんだ』
珍しく真面目に話す倉木の言葉を正義は黙って聞いていた
『それで一年前娘が入院する事になって、妻は実家がある田舎に行こうって提案してきた。田舎は空気が綺麗だし自然もいっぱいあるしな』
再びタバコを吸い始めた倉木は、写真に映る娘の顔を手でなぞった
『……でも俺は行かなかった。家族が一番大切だったはずなのに』
倉木はそう言った後、正義の顔をじっと見つめた
『お前が言った通り、修の事を解決出来ないままこの町を離れる訳にはいかなかったんだ』
それほどまでに修は倉木にとって大きな人物。この時、正義の頭に思い浮かんだあの言葉
“星野さんは本当に何も分かってないですね。
兄さんは倉木さんに見捨てられて殺人鬼になったんですよ?”
高木功が言っていた事が頭から離れない
倉木と修の関係
それは元教え子だという事しか正義は知らない
でも倉木はきっと修の死やその経緯を確実に知っている



