Iの漂流戦士






703号室に入ると玄関があり、倉木の私物であるスニーカーが数足に傘が一本


1DKの部屋には物があまりなく、あるのはテレビとテーブルがあるぐらいだった



『まぁ、そこら辺に座れよ。お茶ぐらい出すからさ』


倉木は小さい冷蔵庫から缶のお茶を二本出した

『あ、すいません…』と正義はその場に座り、チラッと周りを見るとある物を見つけた


---------------それは一枚の写真。


テレビの横に立て掛けられている写真には写真立てもなく、ただそのまま置いてあるだけだった



『……あーそれか。そう言えば星野には言ってなかったかもな』


正義の視線に気付いた倉木は聞かれる前に自分から言った


深く聞いていいのか迷ったが、正義は聞かずにはいられなかった



『……倉木さん結婚されてたんですか?』


写真に写っていたのは倉木の他にもう二人、奥さんである女性と幼い女の子


倉木は正義の真向かいに腰を下ろし、缶のお茶を一口飲んだ



『俺の娘可愛いだろ?今年10歳になるんだよ』


そう微笑む顔はまさに父親の顔、正義は少し戸惑ったように言った



『娘さんも居たなんて初めて知りましたよ』


思えば倉木と私生活については話した事がなかった


休日は部活の指導、そして深夜には愛の手の活動
。倉木はそんな忙しい毎日を送っていたから正義は勝手に独身だと思い込んでいた




『まぁ隠す事じゃなかったけど、人に言えるほど立派な父親じゃないもんでね』


いつもと皮肉だと思いきや、倉木の瞳はどこか寂しげだった