【殿町 イチョウ通り】
車が行き交う大通り。ナノハは1人でいつもの場所に来ていた
それは正義とパンジーの花を植えた花壇
『……まだ咲いてない』
ナノハはチョコンと膝を屈(かが)めて、緑色の芽を触った
日に日に芽は大きくなっているのに、まだまだ花は咲きそうにない
『そのパンジー、そんなに大事?』
ナノハの背後から足音と共に聞こえてきた声
ナノハは振り向く事なく、一言返した
『うん。きっと綺麗な花が咲くと思う』
そんな返答に、声の主は静かにナノハの背後に立った
『それはあの先生が植えたから?』
キラリと眼鏡が光り、胸には睦と書かれた金ボタン
『……どうしてそんな事を聞くの?功』
高木功はナノハの隣に座り、一緒にパンジーを見つめた
『俺にはナノハちゃんが“違う花”を見ているように見えるんだよね』
高木功はあの出版社から出た後、真っ先に殿町に向かった
本当は学校に行く予定だったけど、そんな気はあの言葉で完全に失せた
“……枝波修君だよね?高木君のお兄さんの名前”



