どこか遠くを見るように、修は屋上の手すりに手をかけた
雲の切れ間から射し込む朝日が丁度修の顔を照らし出す
『……一馬は見たりしねーの?
そんな夢』
“そんな夢”と遠回しな言い方をして、自分が見た夢と重ね合わせる
一馬はそんな修の後ろ姿をただジッと見ていた。そして……
『僕は夢を見るほど深く寝ませんから』と大人びた答えをした
修は一馬の返答に反応する事はなかった
そんな修を見て、一馬は少し切なそうな顔をする
顔は見えないけど、一馬には修が今考えてる事が痛いほど分かったから
修が見た夢とは
自分が生きていた時の夢
悩んだ事、苦しかった事、悲しかった事
どれも思い出したくないけれど、修にとって一番思い出したくない事は
死を決意したあの瞬間
グッと銀色の包丁を手にして、これで楽になれると思ったあの瞬間の光景だけが
今も修の脳裏から離れない
『……修さん聞いてもいいですか?』
一馬の一言で修はハッと我に返った
『…………ん?』
そう言って振り返ると、パソコンをいじっていたはずの一馬が真後ろに居た
その顔はどこか寂しげだった



