【オフィスビル26階 屋上】
殿町もまた、冷たい雨に濡れていた
ビルの屋上であるこの場所にも、絶え間なく降り続く
『なぁ、お前らってやり残した事ある?』
唯一、屋根がある屋上の入り口に修は居た
ドアがあるその場所は一段、段差がありギリギリ二人は雨宿りできる
修はそこに立ち、ナノハは体育座りで座っていた
開けっぱなしになったドアの向こう側には一馬の姿
すぐ屋上を降りる階段があり、一馬はその一番上に座って二人に背を向けていた
『やり残し?』
修の質問にナノハが反応する
一馬も勿論聞こえていたが、膝に乗っているパソコンに夢中のようだ
『……修はあるの?』
ナノハは座ったまま、修を見上げた
修は雨を見つめ、少し黙っている
まるで何かを思い出しているように……
『俺はないよ。俺は…全てを終わりにした後だから』
修の言葉は意味深だった
でもここに居るナノハや一馬はその意味が分かっている
『……修さんは相変わらず雨の日になると思い出すんですね』
一馬が背中越しでポツリと呟いた
修は一馬の声だけを耳で拾い、振り向く事なく返した
『残念ながら自然に目に入るもんでね。まぁ…もし天気を操れるなら俺は一生雨なんて見たくないよ』
誰でも思い出したくないものや、行きたくない場所はある
人や物、場所ならば自分で回避できるが天気はどうにもならない



