Iの漂流戦士






雨が二人を濡らし続ける


気持ちを押さえきれないのか高木功の言葉は止まらない


『誰も救ってくれなかったくせに、誰も救えなかったくせに…………』


---正義は考えた


修は誰にも救いの手を差しのべられなかったのではないか


そして殺人鬼になり、自分と同じような人間を救っているのではないか、と



『修君は必ず俺が救う。救ってみせる、だから…………』


正義がそう言うと、高木功はガシッと正義の胸ぐらを掴んだ








『もう遅いんだよ、
兄さん達は死んでるんだから』


ザァー………と雨音が耳鳴りみたいに正義に響く


ドクン…ドクンと鼓動する度に高木功の手が強まる



聞き間違いだろうか?

いや、そう思いたいのは正義の方だ



『兄さん達は殺人鬼で居る事で、ここに存在し続けてる。それなのにあんたは救いたいと言う』


『……………』



『殺人鬼じゃなくなったら兄さんは消えるんだよ…。…お願いだから…もう誰も俺から兄さんを奪わないで』



高木功の頬を冷たい雫が伝う

それは雨ではなく涙


殺人鬼じゃなくなったら
殺人鬼は消える


殺人鬼を救ったら

殺人鬼はここから居なくなる


そして正義は頭で何度も繰り返す


彼らはもう死んでる、と



ザァー…………………と雨は強まるばかりで止む気配はない


この雨は雨なのか、
それとも誰かの涙なのか


それは誰にも分からない



だけど修を知る人間はみんな雨が嫌いだ


だってあの日もそうだった


枝波修がビルの屋上から飛び降りたあの日も