Iの漂流戦士






正義は車で来た為、傘を持ち合わせていなかった

おかげで雨は正義の体を徐々に濡らせていく


その様子を高木功はジッと見つめている。でも傘を半分貸したり、気にかけたりはしない


一方正義自身も“車の中で話そう”とは言わなかった


だって正義が聞きたい事はたった一つ

その一つの事がどうしても高木功の口から聞きたかった



『早く話したらどうですか?僕のせいで風邪をひいた、なんて言われたら迷惑です』


ポツ…ポツー…と高木功のビニール傘に雨が当たってゆく

正義の前髪から伝った雫(しずく)がポツリと地面に落ちた


--その時、やっと口を開く




『漂流戦士は枝波修君の物語だよね?』


ポツ…と大きな雨がビニール傘に落ちた

傘の隙間から見えた高木功の口元が僅かに微笑んだように見えた


高木功はゆっくりと傘を傾け正義に顔を見せた

そして



『------はい。あれは兄さんの話しです。俺は今まで一度も“自分の実体験”とは言ってませんし』


漂流戦士は枝波修の物語


はまりかけていたパズルのピースがカチッとはまった



『……昨日修君に会ったよ』

正義がそう言うと、高木功の表情が変わった


その表情はまた傘で隠され、正義には見えない