“あなたは本当にずっと隼人君が邪魔でしたか?”
“愛する人が生んでくれた子供をあなたは愛する事が出来なかったのですか”
そんな筈はない
新造は隼人を愛していた
妻が亡くなり何も分からなかったが、確かに新造は隼人を育てようとしていた
新造が話し終わると、部屋の入口から物音が
そこには隼人が立っていた
隼人の顔を見た瞬間、新造は崩れるように涙を流した
隼人の手には見覚えのある携帯
新造が警察に電話をしろと女性に渡したものだった
隼人はあの後女性を追い、携帯を取り上げていた
女性は隼人に説得され帰ったのか、もう姿はない
隼人はずっと別の部屋で正義と新造の会話を聞いていたようだ
そして感情を押し殺すように隼人が口を開く
『……父さん。俺は父さんが嫌いだった。殺してしまいたくなる程憎かった。…でも、昔からそうだった訳じゃない』
隼人だって母親が亡くなった後、頼りにしていたのは父である新造
新造が慣れない子育てを必死にやっている事は隼人も知っている
料理なんてした事のない父が頑張ってやっていた事
ゴミの分別が分からず、近所の人に怒られる姿
二人して寝坊し、慌てて外に出たあの日
高熱が出て寝ずに看病してくれたあの時
隼人は父となら二人でも生きていけると思っていた
不器用で失敗ばかりする父親だけど、それでも隼人にとっては愛すべき存在だったのだ
母親などいらない
形だけの母親なんて欲しくはない
でも、父が愛した人ならば、隼人はきっと母と呼べただろう
妻を愛したように、また誰かを愛したのなら
父は子を想い、女性を愛した
それは本当の愛ではなく母親を与えてあげる為に
子は父を想い、女性を愛さなかった
それは本当の愛ではないと知っていたから
どちらとも本当の愛ではないと分かっていたのに、すれ違ってしまった
お互いがお互いを思うばかりに



