Iの漂流戦士





月日が経ち、時代も変わったように人間もまた変わってゆく


子供にとって親が絶対であったように、親もまた子供が絶対だった

お互いがお互いを一番に考え合う絶対的な絆


しかし今の時代、それは絶対ではないのだ


“……隼人君はどうしたい?”


半年前に正義が聞いた質問


“…………俺は帰りたいです。あの家は母さんが暮らした場所だから”


こんな家でも帰りたいと言った

こんな父親が居るこの家に、



『あなたは俺に言いました。“子供の居ないあなたに父親の気持ちなんて分かりませんよ”と。確かにそうです。俺に父親の気持ちは分かりません。』


『…………』


『だけど、すごく羨ましく思うんです。父親になれた事、子供が居る事、家族が居るあなたがすごく羨ましい』


今まで正義が味わった事のない経験を新造はしている

愛した人と結婚し、子供も作り、家族になった

正義はこの家に来た時から気付いていた


汚いゴミの部屋に飾られる一枚の遺影を

ただ壁に立て掛けられている写真の周りにゴミや物は一切置いていなかった


そう、新造の妻であり、隼人の母親の遺影だった


女を毎日連れ込み、父親らしい事を何一つしていない新造が妻の遺影だけはしっかりと飾っていたのだ


もし本当に柿崎新造という男が腐った人間ならば、死んだ妻の遺影など大切にする訳がない


女を連れ込んで遊んでいても、妻の遺影を見える所に飾る新造の心中はなんなのだろうか?


きっと答えは一つ


まだ愛しているから


まだ忘れていないから