『今日は止めにする?明日ならこんなに人も居ないと思うし…』


高木功はナノハの顔を覗き込み表情を確認した

ナノハは渋々首を立てに振り、二人は並んでいた列から外れた



『ナノハちゃんごめんね。無理矢理連れて来たのは俺なのに…。まさかこんなに混んでるとは思わなかったから』


人混みの中を上手く避けながら、なるべく人があまり居ない場所を探す


『行きたいって言ったのは私だよ?それに見えなくても花のいい匂いがする』

高木功は『そっか』と優しい顔つきでナノハを見つめ、そっと右手をナノハの左手に寄せた


ほんの数センチまで近付いた所で、高木功はゆっくりと右手を元の位置に戻した

ここで“人混みだから”と理由を付けてナノハの手を握る事はきっと簡単だ


ナノハもきっと嫌がる素振りも見せず、手を繋ぐだろう


だけど、ドキドキと鼓動が波打つ高木功とは逆にナノハの心臓はドキドキと鼓動したりしない


そんな一方通行の手繋ぎなど余計心が虚しくなるだけだ