Iの漂流戦士





その日から倉木は睡眠薬を飲まなければ寝れなくなった

枝波修が殺人鬼になり、人を殺す理由が倉木には痛い程分かっていたのだから


なんとかしてあげたいと思う反面、自分にそんな資格はない

そんな罪の意識から自分と同じく殺人鬼を気にしている愛の手の仲間、星野正義に何気なく殺人鬼の正体を示す手掛かりを教え続けた


高木功に会わせたのも、漂流戦士を読めと進めたのも全部自分の代わりに殺人鬼達を救って欲しいと思ったから


だけど倉木は決して殺人鬼の正体を正義に話す事もそうなってしまった経緯も言わなかった


倉木は怖かった

全てを言ってしまえば本当に何もかも正義に背負わせ、自分は“あの日”のように修から逃げる事になると

だけどやっぱり倉木に殺人鬼01を追う資格はなかった

正義なら自分に出来なかった事をやってくれるかもしれないと勝手に期待をしていた


『星野……俺を殴ってくれよ。俺は俺の勝手な私情でお前に全てを背負わせようとしていたんだから』


うつ向く倉木に正義の手が伸びる

その手は顔ではなく肩をポンッと叩いた


『何言ってるんですか。倉木さんに言われなくても俺は殺人鬼を追っていましたよ』


確かに倉木の言葉によって殺人鬼についてもっと知りたいという気持ちが沸いたのは事実


でも倉木の言葉がなくても正義は殺人鬼を追わずにはいられなかっただろう


『倉木さん。俺、倉木さんと修君との間に何があったか聞きません。それでなぜ修君が殺人鬼になったかも聞きません』


『……星野……』


『今までも自分の足で調べて来たんですから、これからも自分で調べたいんです』


その後、正義と倉木の携帯がほぼ同時に鳴った

表示されている名前を見てサーッと血の気が引いていく


“北徳春高校”“緑丘高校”

ドキッ!と二人で顔を見合せ『忘れてた…』と声を揃えた


届け物を緑丘高校に届け為に外出していた正義と何も言わずに飛び出して来てしまった倉木


事情は違うが、二時間以上何の連絡もせず、学校に戻らなかった二人は各々こっぴどく校長先生に叱られてしまった

給料から外出していた分のお金が引かれたのは言うまでもない