お風呂から出る。いつものようにある、何十枚ものファックス。
 壊したいのに、掲示板に張り出されたあの時よりはマシだから。
 愛している、君を見ている、好きだ。そして、あたしの写真。最近変わったのは、あたしの写真に笑顔の写真もあって、それにリクも写っていて。
 空と海は交われない。大地が邪魔をしているから。けれども、海は空を追い求め続ける。
 一番最後の、いつも同じ文章。
 大地はリクだ。リクがいるからまだ、あたしは人間でいられる。
 壊した電話から、音が聞こえるかもしれない恐怖。塞いだポストから、また刃物が送られるかもしれない恐怖。
 リク。
「ソラ。」
「お義母さん――。」
「電話。」
 差し出されたお義母さんの携帯。あたしは恐る恐る耳を当てる。

「ソラ。」

 嫌だ。お義母さん。この電話壊してよ。だって。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ソラ!?」
 アイツの声がする。
 それからあたしは、父親よりも大好きなお義母さんの携帯が怖くなった。毎日毎日、かかってくる。だから、お義母さんはその携帯を会社ごと変えた。