冷たいと思えば、甘くなる。


突き放されたかと思えば、心配してくれる。



それがどんなに相手を傷付けるかなんて透は1ミリもわかっていないんだろうな。





「冷たいか…優しいかどっちかにしなさいよね…」




バタン―と音を立てる透が出ていった玄関のドアを見ながらぽつりと呟いた。


たった一人の初めて足を踏み入れた部屋はただ居心地が悪い。


小さくため息を吐きながら自分の荷物を引っ張り基点になるリビングのソファーにぼふんと音を立てながら座り込んだ。





「――…元カノでもない…か…」




シン…と静まり返るリビングに虚しく響く声にほんの少しだけ泣きたくなった。


あれだけ必死に追って追って追い掛けて、やっと手に入れたと思った幸せは指の隙間からすんなりとこぼれ落ちたのは四年前。

忘れた…と、あんな最低男なんて好きなんかじゃないって思っていた。



なのに、一目惚れでしかも初恋って言うのは自分で思うよりもずっとずっと心に残るのかもしれない。



同居と同棲は違う。


同居=同棲


そんな方程式は成立なんてしないんだ。