すると、随分後方なので確認しづらいが、誰かが地面に膝を着いているように見えた。


俺はゆっくりゆっくりとその人に近付いて行く……ゆっくりゆっくりと……


「うわ〜ん!こぉわぁいぃよぉぉぉ!……ヒック……ヒック……」


同じ高校の女生徒だ。校章の色も同じ……一年か。


「だ……大丈夫?」


俺が優しく声を掛けると、彼女は一瞬安堵の表情を浮かべたが


キッと俺を睨み付けた。


「なんで逃げるのよ!」


「いや、急がないと舎監長に怒られるし」


オバケだと思ったし……。


「はぁ……でも良かった……このままずっと一人だったらどうしようかと思ったよ!」


「俺も……つーかなんでこんな時間に一人で歩いてるの?」


「駅前の貸し自転車屋さんで自転車借りたんだけど、今日から一週間寮だって忘れててさ……」


「あ〜……俺と一緒だ……」


やはり新入生では珍しい事ではないようだ。そりゃ、バス賃片道300円と自転車一日200円が目の前で並べば、返す時の事なんか頭からすっとんでしまう。


まぁ、ここで出会った事は、お互いにとってとても都合のいい事だ。


俺達二人は一緒に帰る事にした。