「そんなに泣いたんだ……俺が産まれた事、嬉しかったのかな?」


「そうだよ。あの人はそういう人。たとえ血の繋がりがなくても、由は俺の子だ!って思える人だったから。……本人は悩んだ時もあったらしいけど、母さんの方が父さんのことよく解ってた。」


「……なんか嬉しいな。じゃあ母さんが俺を連れて家出した時は?父さんどんな気持ちだったのかな」


「父さんだって人間だから、周りの人を羨ましく思う事もあったでしょうね」


「ひどい事言われて、離婚しようとか思わなかったの?」


「うん。少しもね。母さん、父さんの事信じてたから。それにあれは父さんの事、少し自由にしてあげたかっただけ」


「母さんだって遊べなかったのに?」


「母さんは家でのんびり出来たからね。父さんは毎日毎日嫌な仕事して疲れてたのに、全然遊びに行ったりする人じゃなかったから。でもね、せっかく自由にしてあげたのに、父さん遊び方知らないから、たくさん貯金してたよ。家でずっとチャーハン作る練習してたみたい」


「へぇ、父さん真面目だったんだね!」


「ううん。不器用だったのよ。でも、それからはよくチャーハンを作ってくれた。おいしかったなぁ……」


「ねぇ、母さんは再婚しないの?淋しくないの?」


「うん。淋しくなんかないよ。母さん、今でも父さんが大好き。だから母さんがおばあちゃんになっても、父さんとずっと一緒にいたいの」


「そっか。本当に父さんの事大好きなんだね」


「うん。それは自身持って言える!……ねぇ由、父さんは由のお父さん?」


「うん。父さんがいてくれたから俺が産まれたんだろ?だから俺の父さん!」


俺がそう言うと、母は目に涙を浮かべ、嬉しそうに笑顔を見せた。

俺もまた嬉しかった。今まで遠ざけてきた父親が、俺の心に温もりを与え、みちしるべとなってくれたのだから。