その夜、俺がドギマギしながら布団に入ると、アサミは話し始めた。


「由ちゃんの家はいいね。お母さんと仲良くて」


「お前んちだって仲悪いわけじゃないだろ?」


「ん〜、でもやっぱり距離が出来た感じするなぁ……ちょっと淋しい」


「ふ〜ん……やっぱ再婚したばっかでラブラブってやつか」


「うん。やっぱ割り込める感じじゃないよ」


「そっか……俺は父さんの記憶がないし、再婚でもいいから父親が居ればなって。同じ男として目標が欲しかった」


「う〜ん、お互い悩みは尽きないね。居れば居たで、居なきゃ居ないで。……難しいね」


「あぁ、俺の父親は病気で死んじまったからしょうがないんだけど、母さんが苦しい思いをしてるの見ると、少し恨んでしまう」


「そんな事言ったらお父さん悲しむよ?アタシは由ちゃんのお母さん見てると、お父さんも素敵な人だったんだろうと思う。その証拠に、お母さん再婚しようともしないでしょ?」


「うん、そろそろ再婚してもいいんじゃないかと思うけどな。お前の父さんはどうだった?」






返事がない。




「スー……スー……」


「寝てる……オィオィ、さっきまで起きてただろ!?」


話し相手もいなくなったところで自分も寝ようとしたのだが、何か背中が暖かい。……抱き着かれてる。


「マジか……勘弁してくれ」


俺はその手を振り払おうとしたのだが、アサミの口から


「お母さん」


という言葉がこぼれると、それが出来なかった。


なんだかその日は、いつもケタケタ笑って強がっている彼女の、柔らかくデリケートな部分に触れた気がした。