君に届ける最後の手紙

俺は、かなり酷い事を言っている。捉え方によれば、脅しにも似た言葉かも知れない。


それを聞いたアイは堪え切れなくなったのか、クッションに座っていた俺を、そのまま押し倒し、俺の上に覆い被さる。


「ちょ……」


涙が浮かぶアイの目を見ると、その先の言葉が出てこない。


初めて見たアイの泣き顔。しばらく二人の間に沈黙の時間が訪れる。


「…………」
「…………」


「…………でよ……」


聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声でアイが何かを言っている。


「……聞こえないよ?」


「私とアサミちゃん……どっちが大切か選んでよ!」


意味が解らなかった。何故恋人と友達を量りにかけないといけないのか。


そもそもかける必要があるのだろうか。まぁアイからしてみれば、アサミと俺は恋人に近いものがあったのだろう。


この時俺は初めて知った。大事な人二人を天秤にかけろと言われた時、その「天秤にかけろ」と言った人の事を選んであげる事は出来ない。


俺はそういう奴なんだ。


「……アイ、ごめん……」