「優芽、逃げるぞ」
あたしにしか聞こえないような声で呟くと、あたしの手を握って、走らされていた。
後ろから、「待て、逃げるなっ」と聞こえたけど、玲央は、全速力で走った。
「ハァ、ハァ」
つ、疲れた。
いつの間にか、お化け屋敷からは出ていた。
最近、全然運動していないから体が鈍っちゃったみたい。
「大丈夫か、優芽」
玲央が、あたしの目線までしゃがみ込んで、心配そうに聞いてきた。
「うん、大丈夫」
心配をかけないように、あたしは笑顔を見せた。
「そっか、喉渇いただろ?オレ、なんか飲み物買ってくる」
「あ、ありがとう」
玲央を待っている間、あたしは近くにあったベンチに腰をかけた。

