憧れの川島先輩から呼び出し…。
なんの話なんだろう。

不安と共に少し期待しちゃう…。


あぁ、早く川島先輩、部活終わらないかなぁ。

「おーい、先輩。しっかりしてください」

肩を揺さぶられたことによって、一気に現実に引き戻される。
そういえば今は部活中だった!

「えっ!?ああ、ごめんね、陸くん」

気づくと目の前には後輩の陸くんのしかめっ面。

「先輩何回呼びかけても上の空でしたよ?何処か体調でも悪いんですか?」


「いやいや、そんなことない!全然大丈夫!元気元気!」


「ほんとですか?あまり無理はしないでくださいね」

この心優しい後輩は1年生の荒川陸くん。1年生ながら、ここ吹奏楽部の指揮者をつとめているの。
運動大好きな私が吹奏楽部に入ったのは、まあ色々と訳があるんだけど…。

そんなことより気になるのは、川島先輩との約束。気になるどころか、気になって仕方ないよ!

でも、こうもなっちゃうよね…。
だって、あの憧れのー…。


キーンコーンカーンコーン

「あっ、練習終わり!ごめんね、今日は帰る!」

「えっ、先輩もう帰っちゃうんですか?ほんとに体調大丈夫ですか?保健室に行ったほうが…」

「ううん、大丈夫!ありがとう!」

引き止める陸くんの声を背に、私は音楽室を飛び出した。
待ち合わせは校門前。
先輩が来る前に行かなくっちゃ!

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「はぁっ…はぁ…っ」

全速力で走り抜けてきたおかげで、私は校門に着く頃には汗だくになっていた。
匂いは気になるところだけど、はやく先輩に会いたかったの。だって先輩は、先輩は…ーーー


「おまたせ」

風の音と共に聞こえたのは、先輩のちょっと低めな澄んだ声だった。



「いや、全然!今来たところです!
そういえば話って…」



「そうそう、そのために君を呼びだしたんだもんね。
ちょっと人気の少ないところに行こうか」



「あ、はい」


そんな重要な話なのかな…。



そんなことを考えていたら、校舎裏に着いた。

「あ、あの…それでお話って…?」

人が少ないところに向かうにつれて、口数が減った先輩に、少し不安になって問いかける。


「うん、俺さ、美沙のこと気になるんだよね」


え、いきなり呼び捨て…?
それに、さっきみたいな優しい雰囲気は
全くない。


「そ、それはありがとうございます…」


不安に思いながら、曖昧な返事をしていく。


「なぁ、お前は俺のことどう思うの?」