扉一枚隔てた部屋はガランとしていて、ただ段ボール箱が壁沿いにいくつか積み重ねられているばかりでした。あぁ本当にいなくなってしまうんだな、と思うと不思議な寂しさを感じました。
「まずは、これ。」
リチャードさんが渡してくれたのは、大きな茶色い封筒でした。
「見てみて。」
リチャードさんは目をキラキラ輝かせながらしきりに勧めるので、そうっと覗いて中の一枚を引っ張り出しました。
そこには…
拓海と私が写っていました。
初めてスタジオの撮影にお邪魔した時。カイの支度を整えていますが私と話しているせいか、表情がきめてるものではなく拓海の顔をしています。私も私服のままで、まだモデルになることなど思いもしない時でしょう。
「いつの間に…」
全然気づきませんでした。
それに…私こんな顔で拓海と笑っているんでしょうか。

