そういってから、事情を詳しく話してくれました。
今日が正真正銘リチャードさんの国内最後の内輪の送別会なこと。
あのお姉様方は今までリチャードさんと仕事を支えてきたスタッフさん達で本当は一緒に海外に行きたいのに許可されなかったこと。
「日本国内でどんなに評価されても、海外に出たら一から仕切り直しだ。海とも山とも予想つかないのに連れていくって出来ねぇよなぁ。」
そのしみじみとした声があまりにも弱々しくて、同意もましてや否定も出来ませんでした。
そして拓海の中にもお姉様方と同じ思いがあることに気づいてしまいました。
あぁいつか拓海はまたきっと、どんどん遠くに行ってしまう。どんなに追いかけても肩を並べることは叶わないかも知れない。
不意に浮かんだ、墜落していくような心細さに自分で驚きました。
………わかっているはずなのに。
この人は今は隣にいてくれていても、本当はもっと上にいる人。そしてもっともっと上に行くことが出来る人だということが。

