「それはどうもありがとう。」
理事長さんが笑いながら律儀に返事をしてくれました。あぁ!仮にも親戚の方を前にあまりにも正直過ぎました。
「いえ、あの…。えっと、それはですね。」
「お前正直過ぎる。さすがだ。思っていても誰もそこまでは言えないぞ。せいぜい安斎くらいだな。良く言った。」
それ、誉めてないですよね。拓海は涙をふきながら、どうにか笑いを収めると、理事長さんの方に向き直り
「こんな奴なんでよろしくお願いします。」
頭を下げたので、あわてて私も隣で頭を下げました。
「わかった。押さえるところは押さえるけれど、出来るのはそれだけだ。生徒間のトラブルまでは干渉出来ない。いいね?」
「わかってます。ありがとうございます。」
再び頭を深く下げた拓海に合わせて、私もまた頭を下げてお礼しました。…本当は状況がよくわかってなかったのですが。
そんな不安から拓海の顔を伺うと、こっちを向いた拓海は「大丈夫だろ?」とにっこりと笑いかけてきました。
うぅ。不意討ちです。そんな素直な笑顔を向けられるなんて…。

