引こうとしても離してもらえない手に、固まっていると
「もう起きていいか?」
寝たままだった拓海の顔がいつものいたずらっ子の表情になり、目がゆっくりとひらかれました。
「…あれ?いつから?…えぇ?」
あわてて手を引いたりふったりしても、しっかりと握られた腕は拓海から取り戻すことはできませんでした。
「ちょっと…あの、離して。」
「だ~め。」
拓海は面白そうにニヤニヤ笑うだけでつかんだ手を離してくれないばかりか、グッと引かれて思わず拓海の胸元に飛び込んでしまいました。
「………きゃっ」
胸元にギュッと抱き込まれ、ワタワタしていると
「…何で」
「………え?」
呟くような声が拓海の胸を伝って直接耳に響いて、その意味がわからず拓海の顔を見ようと離れようとしましたが更にギュッと強く抱き込まれてしまいました。身動きがとれずにいると
「何で言わなかった!」
苦しそうな声で拓海が叫びました。
そんな声を聞くのは初めてで、抱き締められている状況と一緒になってびっくりしてしまい、頭が真っ白になってしまいました。

