「お前だったら大丈夫。変な勘違いで道を踏み外したりしないから。絶対俺がそんなことさせない。だから、ちゃんと前をまっすぐ向いて全力で追い掛けてこい。全部見ててやるから。」





あぁ、そうか。


もっと拓海の側に行きたいと思って決心したのにちっとも近づけなくて、焦ってたんですね。こんなに側にいてくれるのに、いつからこんなに欲深くなってしまったんでしょう。


手を伸ばせば握り返してくれるのに。


目を見れば微笑みを返してくれるのに。




その優しい微笑みがだんだん近づいてきて、軽く啄むように唇が触れて離れていきました。





その優しさは、私の胸にツキンと小さな棘を植え付けていきました。






でも、臆病な私は拓海の優しさをなくしたくなくて、気づかない振りをして、恥ずかしさに振り回されていることにしか目を向けようとはしませんでした。