「イズナ?」

ひょこっと玄関から顔をのぞかせると、彼の声が奥の方から聞こえた。

「悪い、起こしたか。入れよ」


Tシャツの腹部をめくって額の汗を拭いながら出てきた彼を何だか直視することができなくて、思わずそっと目を逸らしてしまう。
思ってない。
けっこう体引き締まってるなとか、そんなこと全く思ってない。
変態じゃあるまいし。


「ねぇ、体調でも悪かったの?」

「ん?」

彼女が訊ねると、今度は彼が小首を傾げた。
その様子を見るとどうやらそういう理由では無いらしい。

「だって、昨日、花火…」

そこまで言うと、さすがにわかったらしい。
彼は納得したように手を合わせ、

「おぅ、昨日はもう腹が痛くてしかたなかった」

「花火も造れないぐらい?」

「いやぁ、ほんっとに痛かったな。腹が落ちるかと思った」

ほっぺが落ちそうとは言うけど、腹が落ちそうとは言わない。
…何か、あやしい。