「お兄ちゃんを連れてってください」
「え?」
思わず聞き返してしまい、視線を戻した。
ミウは微笑みを口元に刻む。
「お兄ちゃんって昔から一度言いだしたことは絶対に曲げない人なんです。義賊になるって言った時も猛反対したのに結局なっちゃって。
お兄ちゃんってああ見えて結構強いんですよ? お料理もできるし、意外に生活感があるというか。きっとオレオさんの役に立つと思います」
「だけど僕がコーズを連れてっちゃったら、ミウちゃんが一人になっちゃうじゃん」
「私なら大丈夫です。村の人達は皆な良い人ばかりだし、それにお兄ちゃんにはもっと自由になってほしい。私や弟のことでお兄ちゃんを縛りたくはないんです……」
掠れた声に籠る必死の決意。
オレオは思う。もしかして彼女自身も縛られているのではないかと。
家族を失い、たった二人の肉親となった今、自分の存在が兄から自由の翼を奪い取っている。
義賊などという危険なことをしているのも、表向きは仇打ちと銘打って、実際は自分を養うための仕事。


