忘却の勇者


ボールスが吠える。


サイの後ろにいたはずのボールスだが、一瞬にしてアグロの前に移動してサイの攻撃を防いだのだ。


「なるほど、超高速移動か」


サイが気付かぬほどの俊足。それがボールスの特殊能力。


情報が少ない十三騎士の上位メンバーの能力を把握することは、己の生存率を高めることに繋がる。


それは逆に、十三騎士にとってはアドバンテージを失ったことにもなる。


「チッ、お前のせいだ。帰ったら査問委員会に突き出す」


「あ、嗚呼、わかった」


再び武器を構える。


交渉は決裂。戦うしか他ない。


元々、四聖官を倒すために送り込まれたのだから―――