一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに真剣な面持ちに戻り大人しく後退した。
アモスは自力で車椅子を反転させて、魔物憑きの男に視線を合わせる。
灼銅の魔人か。
男の姿を確認すると、アモスは目頭を押え少々の悲しみを覚えた。
アモスは男のことを知っていた。
いや“知っている”という安易な関係ではない。
「久しいな。まさか君のような天武の才に恵まれた青年が、ここまで堕ちるとは思わなんだ」
彼を騎士団へ入隊させた推薦人が、アモスだったのだ。
「久しぶりだなアモス様。勇者様御一行があんたを探していると風の噂で聞いてな。あいつらはどこに行った?」
「愚問じゃな。力に魅せられ力に溺れた弱き者め。貴様の器を見誤ったことが、儂の現役時代の数少ない汚点の一つじゃ」
「勇者はどこに行ったと聞いてるんだよ!」


