猫又は夜に鳴く


「はいはい、その話はそこまで。賢二君が困っているでしょ」

そう言って母がテーブルの上に大きなお皿を置いた。

「今日はおめでたい日だから海鮮ちらしにしたのよ」

母がそう言いながら次々に料理の盛られた皿を置いていく。

取り皿と箸を全員分置くと、母が席に付き小さく手を合わせた。

それに合わせて皆で手を合わせる。

「いただきます」

そう声を合わせると、母がお皿にちらし寿司を取り分け始めた。

「あ、いけない。賢二くんは魚が嫌いだったわよね」

母が今頃思い出したかのようにハッと顔を上げ、ちらし寿司を盛る手を止めた。

「あ、平気です。最近食べられる様になって」

「大人になると味覚が変わるってよく言うものね」

彼が困った様に笑うと、母が嬉しそうに笑ってちらし寿司のお皿を彼の前に置いた。

みんなの分がそれぞれ取り分けられると、彼はもう一度「いただきます」と言ってから、ちらし寿司を一口頬張った。

「凄く美味しいです」

彼のその言葉に母がまた嬉しそうに笑うと、私も同じようにちらし寿司を頬張った。