猫又は夜に鳴く


「ネロもきっと喜んでいるね。彩乃にこんな素敵な旦那さんが出来て」

そう言って祖母は深く頷いて笑った。

「ネロはきっと猫又になったんだよ。だからどこかで彩乃の事を見守ってくれてるはずさ」

その祖母の言葉に両親の口から「また、それ~?」とあきれた様な笑いが漏れた。

祖母はネロが猫又になったと信じて疑わない。

なんでも何十年も生きた猫は不思議な力を授かり妖怪になるらしい。

猫又は尻尾が数本に増えたり、人間の言葉を理解出来る妖怪で、妖術で人を惑わせたり……人間を食らいその人間になり変わったりもするらしい。

「そうかもしれませんね」

そう言って彼が笑うと、祖母は嬉しそうに笑みを浮かべ頷いて返した。