「も~やめてよ!」 母と同じように頬を赤らめたままプイっと横を向くと、不意に棚の上に置かれた写真立てに目が留まった。 古ぼけた写真立ての中に、一匹の黒い猫が写っている。 長い尻尾を綺麗に巻き、ツンと澄ました顔で写真に写る黒猫。 「……ネロ」 そう小さく呟くと、皆が私と同じように写真に視線を向けた。