彼の腕に抱かれたまま、静かに目を開く。
彼の大きな体が私を優しく包み、その中で懐かしい記憶が浮かんでは消えて行った。
……ごめんね、賢二。
心の中で私のかつての恋人の名を呼んだ。
彼はもう……どこにもいない事を私は知っている。
悲しいと思う反面、私は幸せを感じていた。
スゥスゥと彼の寝息を聞きながら、彼の漆黒の髪をそっと撫でる。
それはまるで深い闇の様な……《黒》
この誰も知らない罪を、私は背負って生きよう。
……彼と一緒に。
「私も愛してる……ネロ」
彼に聞こえない程小さな声でそう呟き、クスリと笑うと……愛しい温もりを感じたまま、そっと目を閉じた。



