猫又は夜に鳴く


「おい、母さん!アルバムどこにあったっけ」

父が急にそんな事を言って勢いよく立ちあがる。

「そこの押し入れにしまってありますよ」

母のその答えを聞き終わるよりも早く、父は押し入れを開け中をゴソゴソと漁った。

「おお……あった、あった」

父が古ぼけたアルバムを手に嬉しそうに笑って振り向く。

「これだよ、これ!可愛いだろ~」

完璧に酔っぱらいオヤジへと変貌した父は、懐かしそうに目を細めて幼い私の写る写真を見つめた。

そこには父のTシャツの裾を掴み、必死に父の後を追いかける私の姿が写っている。

「あ~あ。この頃は天使だったのになぁ」

父がしみじみとため息を吐き、パラパラとアルバムを捲った。

そこには幼い頃の私の姿と……黒い猫が写っていた。

ワクワクするような春も、暑くてバテバテだった夏も、穏やかに過ぎて行った秋も、寒さに震えた冬も……私の隣にはネロが居た。

ネロとの遠い記憶が蘇り遠くを見る様に写真を見つめる。

すると彼は懐かしむ様に目を細めて、私と同じように昔の写真を見ていた。