―優等生乱用


「ねぇ」

私は彼に聞いた。
ここにミライが居なくて
本当に良かった。

私は本から目を上げずに聞いた。


「兄貴ってどんな時に泣く?」

あまりに突拍子もない事を聞かれたので
兄貴はしばし固まっていたがすぐに答えた。


「うーん、男は泣いたらカッコ悪いよ」

「じゃあ泣いた事ないの?」

「いや、昔は泣き虫さんだった」


彼ははにかむ。

私は驚いて彼を見る。

笑顔しか見せない彼が
昔は涙を見せていたのか…。