自分でなんとかしないと
「放して…」
『嫌だよぉ』
「放してっていってるの!」
目に溜まった涙の理由は、どっちのせいなのか分からないけど。
『泣いちゃって…可愛いねぇ』
私は腕を精一杯ふって、なんとか逃れようとする。
なのに一向に腕は解放されなくて。
その間も引っ張られて、どんどん奴のテリトリーの中へ引きずり込まれてしまう。
『友達もいるからさぁ……、男ばっかだけどねぇ』
「やだやだやだ!!!!」
ムカつく。
こんな奴さえも自分の思い通りにならない、自分の非力さに嫌気がさす。
下唇をギュッと噛んだせいで、痛みが走り、少しだけ血の味がした。
『血、出てるよぉ?』
「触んないで!」
唇に奴の指が触れた時には、嫌悪感しかなくて。
『……いい加減にしろよ!』
「っっ!」
私を掴んでない方の奴の腕が振り上げられて、目をきつく閉じて身構える。
『女の子を脅すなんて、ましてや那子ちゃんをだなんて………見逃すわけにはいかないね』
語尾のばし野郎の動きを制止させて、満足そうに微笑んだのは……
『大丈夫?那子ちゃん』
真人さん…。
『どっか行かないと……、知らねえよ』
『うっ……』
真人さんの妙な迫力に、語尾のばし野郎は悔しそうにどこかに消えていった。



