このままだと誘拐……
じゃなくて…っ
「りゅ………さん」
頭に浮かんだのは竜さん。
助けて、竜さん……
『はい、ストップ』
「へ……?」
頭上に聞こえた声に振り替える。
「…竜……さん」
本当に来てくれた。
『その手、放して』
竜さんは語尾のばし野郎の腕をギリギリ握る。
嬉しくて嬉しくて、ビリリ、って体に電流が流れたみたいに感じた。
……でも、次の瞬間、まさか感電してしまうなんて思わなかったなぁ。
『誰か溺れてるぞー!!』
焦ったような誰かの声に、竜さんも私も、語尾のばし野郎までも騒ぎの方へ目を向ける。
すると目に映ったのは、沖の方で水しぶきと共に、女の人がもがいている。
『……美月っ!!!』
竜さんは、そう叫ぶと握っていた手をあっけなく放して、海に飛び込んだ。
溺れてるのは美月さんだったんだ。
『見捨てられちゃったねぇ』
ニヤリと笑う語尾のばし野郎の必殺技、語尾のばしに、苛々さえも出来ないくらい、なんだか空っぽだ。



