『一番大事な人、忘れてるよ』
その声は、私が嵐達を見送って自室のドアを開けた時、背後から聞こえた。
「永樹…さん…」
帰ったんじゃなかったのか…!
『罰ゲーム、して欲しいの?』
「意味分かんない…っ!」
永樹さんは私を部屋に押し込んで、扉を閉めた。
『俺我慢してたんだよ?那子に触りた過ぎて気が可笑しくなりそうだった』
「…な!!」
永樹さんは素早く私を壁に押し付け、瞼にキスを落とす。
『真っ赤…。喜んでるんだ』
「やめ……っ」
『止めないよ』
鼻、耳、頬、首。
唇で触れられるそこは、熱を帯び、全身に伝わる。
そして、それは私の唇の前で止まる。
『"キスして"って言って』
「……!」
何で私が!
止めないって言ったのだって、先にやりだしたのだって、どっちも永樹さんなのに。
そう思うのに、触れない距離が焦れったくて。
息がかかる程近いのに。
『言わないの?』
「………もう…っ」
本当に、嫌だ…!
変態!馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!!!
私を、その気にさせるのが上手い。
いっつも永樹さんの思い通りで。
でも、
「キス…して…」
『可愛いすぎて止まんなくなる予定だかんね』
「ん…っ」
それは、私の思い通りでもあるのかも…。
って、順調に永樹さんの変態に侵食されっていってる気が……。
『大好き』
性質はゆるくて変態。
私の……
「…っ私も……」
大好きな人。