あの人には遠慮ってものが備わってない。
「唾液って………!」
1人で顔を赤くして馬鹿みたいだけど、熱くて、熱くて。
『那ー子ちゃん』
そこで、背後から声がした。
「一さん…、どうしたんですか?」
その声の主とは一さんで。
何か用事か、と首を傾げたのは私。
『いや、あのさ…那子ちゃんと話がしたくって』
「は、はい」
私が人数分の飲み物を用意している傍らで、リビングの椅子に座る一さん。
何か、不思議な空気。
『美月の事なんだけどね…』
まさか、今、美月さんの名前が出てくるだなんて思っていなくて、私は一瞬手を止める。
『話していい?』
「どうぞ」
でも、今私が美月さんを拒否する理由は何処にも無くて。
『美月の事、誤解しないであげて欲しいんだ』
頷いた一さんは、ゆっくりと話しだした。
『美月が言ったわけじゃ無いんだけどね、あいつは不器用で、馬鹿だから…。きっとあいつはずっと竜の事好きだったんだ』
「でも!酷い事ばっかり言って…!」
一さんはそう言うけど、私の記憶では、美月さんは竜さんに悉く酷い言葉を吐いたんだ。
『その裏に美月のどんな気持ちがあったかなんて、推測で人に諭すべきじゃない事だなんて分かってるんだけど…。
どうしても、誤解があったままじゃ嫌でさ。
あの可愛すぎるだとか、竜に言ったのだって、自分が男っぽい事気にしてた美月に、竜が悪意なしにだけど余計な事言ったんだよ…。まぁ他にも色々あったみたいだけど……。そっから美月も引っ込み着かなくなって結局別れちゃってさ…、馬鹿だよな…本当』



