「永樹さん…!」
握る手はしっかりと強く。
緩める気もなければ止まる気もないようで。
いつの間にか、
「ここって………」
『俺ん家、悪い?』
永樹さんの家で。
「いや…っ、悪いって言うか、その…突然すぎて………」
いきなり連れて来られて意味が分からない。
見るからに一人暮らしっぽいし。
その…やっぱり永樹さんだし、警戒心剥き出しで迎え撃つ気満々と言いますか………。
『だって俺、今パニックなんだもん』
「パニックには見えませんが…」
目の前の永樹さんは見た感じいつもと変わった様子は無く。
とてもパニックには見えない。
『心臓ドキドキいってるよ?触る?』
「……へ…!?」
私の手を自分の心臓辺りに被せる永樹さん。
――ドクン、ドクン
感じる音は早く。
手のひらを通じて私に響く。
「…分かりにくすぎですよ」
『でも、今は分かったでしょ?』
永樹さんは心臓にあてていた私の手を壁に押し付け、ぐっと体を寄せる。
「………!」
『俺、聞こえたんだからね。
那子が俺の事好きだって言ったの』



