どれくらい抱き締められていただろうか。
時間なんて、分からない。
でも、竜さんからそっと離れるまで私は動かなかった。
『那子ちゃんは、永樹が好きなの…?』
「え、それは…」
まさか、聞かれると思わなかった質問に、焦る。
しかし、次に起こった出来事に、私は心臓が破裂する程驚いた。
『やっぱ俺、大人しく待つだけとか無理だった』
「『え?』」
聞き覚えのある声に、私と竜さんは同じ反応を見せる。
そして、そこに立っていたのは……
『来ちゃった』
悪怯れなく笑う永樹さんで。
そして永樹さんを私の腕を掴み、自身に引き寄せた。
『ここから俺真剣モード突入するから覚悟してね?』
私は只起きてる事を目を見開いて見てるだけで。
『今まではさ、別に誰に何を譲っても良いって思ってた。多少の執着はあっても割り切れてた。
でもさ、やっぱり那子だけは無理、あり得ない、俺を差し置いて竜が那子に触れるのとか…、想像しただけで竜に苛々する』
でもその時の永樹さんは、ゆるくなくて、男の人で。
とんでもなくかっこ良く見えた。



