目の前には、魚の絵が描いてある看板をバックに嬉しそうに笑う竜さんがいて。


「遅れて…すいません…っ!」


『来てくれないかと思った……。あのさ…っ、ここじゃなんだし、中入らない?』

「えっ?あ……」


私は確かに自分の意志でここに来た。

後で知らされた待ち合わせ時間は永樹さんも同じ1時で。

だから、どちらかしか行けない。

必然的に、想う人の方にしか行けないという事。



そして、私はここを…、竜さんを選んだ。


それは間違いない。

確かにここに立ってるんだから。

「あの…っ!竜さん……!」


でも、竜さんの笑顔が痛いのは、


嬉しそうな声に後ろめたさを感じるのは、


「私、今日は、竜さんに……その…」


こんなにも胸が痛いのは、


「…ごめんなさいをしに来ました…っ…」


竜さんに告げなければならないから。


「私、やっぱり…竜さんじゃなかったんです…っ」


こんなにも残酷で痛い答えを。