ヒーローにこの声は届くのか
『ジジジッ』
「きゃあ!!」
のぼせそうだな、と湯船からあがっていた私は、その場にうずくまり耳を塞ぐ。
『ジジジジ!ジジッジジッ!ジジジジジッッ!!!』
「いやぁあ!!も…無理ぃ」
さっきまでとはわけが違う。
何倍もけたたましく飛び回る蝉。
それに反応したのか、露天風呂側の蝉も激しく鳴きながら壁に激突しながら飛んでいる。
何が起こってんの…?
お願いだからその音、止めて。
『ジジジジジ!!!』
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い。
『ジジッジジッジジッ!!』
「グスンッ、誰か…」
“誰か”
顔が頭に浮かんだはずなのに、消えてしまった。
今私が思い浮かべたのは誰?
…竜さん、だよ……ね?
何故かモヤモヤする。
『『ジジジジジ!!!』』
「いやあああ!!」
一瞬蝉のことを忘れて考えた私は、耳を塞ぐのを忘れていて、鮮明に2匹の音が耳に響いた。
「ごめんなさいっごめんなさい!」



