「わかってるんだ。杏華ちゃんはきちんと現実を見てる。全部を考えた上で結果を出したってこと。」
ゴクセンに言っても仕方ないのに、胸の中のモヤモヤしたものが出口を求めて噴き出してきたみたいだった。あの日の杏華ちゃんの寂しい目が忘れられない。
「でも私だって今まで見てきたんだよ。杏華ちゃんがどれだけのものを犠牲にして、精一杯スケートに向き合ってきたのか。あんなに努力した結果が挫折だなんて許せない。寂しすぎるよ。だったら夢なんてみない方がよかった。そしたらあんなに辛い想いをしなくてすんだのに…。何でしがみついてでも続けようとしないの?何でやめるなんて言えるの?夢を諦めた杏華ちゃんなんか見たくなかった!」
感情がたかぶって言葉が溢れて、止まらない。こんなことが言いたいんじゃないのに。
…パン!
軽く頬に衝撃が走り、びっくりして言葉もとまった。
…え?
後からジンワリと左の頬に熱くなってきた。

