先生のお望みのまま


「もう先が見えちゃった。いくら練習増やして頑張っても勝てないんだよね。これ以上は上に行けない。この前なんか年下の子に負けちゃったし…。あ〜限界かなぁって。」



「杏華ちゃん…あんなに好きなのに?勝てなくちゃだめなの?」




「好きだよ。楽しいよ。出来るならずっとやってたいよ。でもね、遊びじゃないんだ。」



そう言った杏華ちゃんの目は、競技をやるときと同じ強い勝負の目をしてた。


「私が迷っていつまでもやってるとみんなに迷惑がかかる。競技を出てたって一人でやってるわけじゃないから。」



厳しいその声は多分私に言ってるんじゃない。自分にいい聞かせてるんだね。一番辛い選択を自分で考えて選んだ杏華ちゃんに、私からは何も言うことは出来なかった。



「じゃ、時間もできたことだし、これからはたくさん遊ぼう!」


ごめんね。こんなことしか言えなくて。



「サンキュ。」


びっくりした顔をしていた杏華ちゃんは、ゆっくりその表情を微笑みに変えた。まだ、その目は寂しいままだったけど…。