あんなに怖い人には格好よく毅然と対峙していた杏華ちゃんが、今は私に向かって気まずそうに目を反らしながら誠心誠意謝ってるその落差がおかしくて、思わず笑いが込み上げてきた。
その顔を見つめてようやくほっとしたかのように杏華ちゃんも顔を綻ばした。
「よかったぁ。希実の顔が強張ってたから、よっぽど怖い思いさせちゃったかと思ってさ。反省してます。」
「違うよ。全然違うの。むしろきっぱり言ってくれてスッとしたんだ。そりゃあ怖かったけど、私には言えないから尊敬した。本当に。たださ…。」
「うん?」
謝ってくれた杏華ちゃんに言ったら呆れられないかな。あんなに怖い思いをしたのに、今の私の頭を占めているのはさっきのゴクセンの言葉だってこと。

