「百合!」


 叫んだときには後の祭り。


『最初に言ったでしょ、キリトは守るって・・・』


 複数のブザーが鳴り響く、やかましいコックピットの中で百合の声がやけにはっきりと聞こえた。


 それは、本当に最後になるかもしれない百合の声。


 やだ・・・。


 それだけは・・・イヤだ!


「百合、死ぬなら・・・一緒に・・・。」


 それこそが、キリトの本心。


 なぜ、こんなことを思ってしまうのか、今はそんなことすら考えらない。


 だけど、今、この瞬間、キリトは間違いなくそう思ったのだ。



『ダメだよ・・・だって、私はもう・・・死んでいるんだもの・・・・二年前に・・・』


 二年前のあの日・・・・。


 孤児院でクーデーターが起きたあの日、俺は逃げて、百合は残った。


 ・・・・・・・・・・そう・・・・・・・・俺たちは・・・・・終わっていたのだ・・・・・・・。


 もう・・・・・とっくに・・・・二年前のあの日に・・・・・・・・・。


「でも・・・。」


『ありがとう・・・・・・キリト・・・・今まで楽しかった・・・・・。』


 ・・・・・・・・・そんなこと・・・・。


 まるで、遺言じゃないか!


「百合!」


 キリトは、まるで悪あがきのように、コックピット内で叫ぶ。


 しかし・・・。