『アハハハ・・・所でさ・・・。』


 不意に百合の声のトーンが変わる。


 何か深刻なことを聞きたがっているのは、その口調から分かった。


「どうした?」


『私・・・いつになったら「身体」ができるの?』


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ・・・・そんなこと、俺に聞くなよ・・・・・。


「またか・・・。」


 そんな返事しかできない。


 分かってる。だけど、出来ないんだ・・・・。


『またじゃないよ、これでまだ二度目だよ。』


 ・・・・・・・分かってるよ。


「お前・・・ギアになりたいのか?」


 そうとしか返しようがなかった。


 一般的にギアと総称されることが多い『ギア・ドール』と呼ばれている兵器。


 この世界ではごくごくありふれた巨大人型軍事兵器である。


 平均身長7~8メートル、体重は5~6トン。


 人間と同じように、二本の腕と二本の足を持ち、大きさと、その見た目以外に人間と大きな違いといったら、単体で飛行が可能という特徴を持っている。


 人工知能とは・・・本来、そのギアに取り付け、パイロットの代わりをする役割を持つ。


 まったく・・・いくら人口が少ないからといって・・・コンピューターに戦わせるとは、世も末になったものだ・・・。


『そういうわけじゃないけどさ・・・それでも・・・思うんだよ・・・』


 ・・・・?


「何をさ・・・?」


『私は、ずっと、ず~っと、死にたいって思っていた。生まれてこの方、生きたいなんて思ったことがなかった。』


「・・・・・・・・・・知ってるよ。」


 こいつは、出会った頃からそういう女だった。


 手首の傷は消えることはなかったし、毎日、毎日、どうやって死ぬか・・・そんなことばかり考えていた。