それが、この機体に与えられた名称。


 百合が薔薇に搭載される・・・どんな皮肉だ。


「名前の由来は、古来の宗教の慣わしです。百合は聖母マリアの象徴、そして、薔薇はキリストが最後にかぶったイバラの冠です。」


 そう自慢げに話す整備士はメガネに脂がまとわりつくぐらいのエネルギッシュな男で、こんなヤツが俺の大切な百合に振れたかと思うと、殺意すら覚えた。


「百合の生まれは降誕祭・・・だから、キリストの加護か・・・ふざけているな。」


 降誕祭・・・ようはクリスマスのことだが、それを知っているからなんだという。


「まぁ、クリスマスって言うのは本来、キリストが生まれた日ではなく、キリスト教が他民族を懐柔させるために、その地域にあったお祭りを、そのままキリストの誕生日に当てはめただけなので、本来12月25日とキリストは何の関係もないのですけどね。」


 知ってるよ。それぐらい・・・。


 すでに名も知れぬ民族の大々的な祭りを、キリスト教が懐柔するために取り入れた祭り。


 それが、クリスマス。


 ・・・・・・・・アイツが生まれた日。


 だけど・・・・・・たとえ、その日にキリストが生まれてなかったとしても、その日に百合が生まれた日だったのなら・・・。


 ・・・・・・・・いや・・・


「馬鹿馬鹿しいな。」


 俺は、今何を思ったのだろうな・・・。